「あひるさん と つるさん」 村山籌子
あひるさんは鳥は鳥でも羽が短いのでとぶことが出来ません。あひるさんの近所に、鶴さんがゐました。二人はお友達でした。
あひるさんは鶴さんの羽を見る度に一度貸してもらひたくて仕方がありません。でも、貸して下さいなどといふことは、あひるさんは恥しくて言へません。「鶴さん、君の羽は飛べるからいゝねえ。僕、君に、僕の持つてゐる万年筆をあげようか」とあひるさんが言ひました。鶴さんは大喜びで、「うれしいなあ、ほんとに呉れるのかい。」と言ひました。「うん、今あげる。」と言つて、あひるさんは鶴さんに万年筆をあげてしまひました。そして鶴さんは毎日、それを胸にはさんでゐます。でも「ぢやあ、君に、僕の羽を貸してあげよう。」とは言ひません。
あひるさんは、又ある日、鶴さんに、時計をあげました。それから靴、それから、鉛筆、色紙、お菓子、本、おもちや、あひるさんは持つてゐるものをみんな鶴さんにあげました。
鶴さんはお家にそれを持つて帰つて、机の中に誰にも言はないでしまつてをきました。鶴さんはどういふわけで、こんなに色々なものをあひるさんがくれるのだか、分らなかつたので、心配だつたからです。でも子供でしたから、矢張りくれるものはもらはずには居られなかつたからです。
青空文庫より
「うさぎさん と おほかみさん」 村山籌子
うさぎさんが散歩してゐました。もうなつになりかけでしたから、きれいな花が咲いてゐました。そしていゝ匂ひがしてゐました。
一人で歩くのは、うさぎさんには、初めてです。なぜといつて、うさぎさんは小学校の二年生でしたから。一人だつたので、とてもこわかつたのでした。うさぎさんは大変背がひくいでせう。ですから、鼻の先に見えるものは、草と、葉ばかりでしたから、ずつと前や、うしろから、何が出てくるか、ちつともわかりません。
ところが、うしろのはうで、がさがさといふ音がしたのです。うさぎさんは胸の中がひつくりかへるほどびつくりしました。
がさがさいふ音が、とてもひどく、ちかくなりました。そして、うしろをふりむいてみましたら、毛だらけの、目が二つあつて、口の大きなものが、ちらりと見えました。
うさぎさんは、「どうぞ、ごめんなさい。わたしはとてもよい子ですから。」と いはうとおもひましたけれど、声が出ませんでした。それで、どんどん逃げ出しました。
すると、うさぎさんのあとから、おほかみさんが一匹とび出して来て、うさぎさんをおつかけました。
青空文庫より

佐藤 愛 Ai Satou
プロフィール
出身地:岩手県
好きなもの
恐竜、キラキラしたもの、お酒、絵本、朝の時間、ハープ、日本庭園巡り、キジバトの声、射的、ストーリーテリング、友達とお茶などなど。
はじめまして。
「早く帰りたいな~」と思いながらも、何やかんやで毎日、楽しくOLやってます(笑)
朗読、楽しんでもらえたらうれしいです。
朗読カフェのおかげで、青空文庫が身近なものになりました。
これからも、よろしくお願いします。
芥川龍之介「トロッコ」
夢十夜第十夜
宮沢賢治「ざしき童子のはなし」
芥川龍之介「蜜柑」
夢十夜第二夜
新美南吉「花のき村と盗人たち」
夢十夜第三夜
小川未明「からすとかがし」
夢十夜第九夜
夢十夜第七夜
銀河鉄道の夜
夢十夜第四夜